自分の豊かさに向き合い、自ら選んだ道を進んできたキッチンカーの方々。そんな彼らの生き方のなかに、自分らしく生きるヒントがあるはず。それぞれの豊かさを、それぞれの想いで叶えるひとに迫るシリーズです。
目次
- 開業実績多数!無料キッチンカーセミナー開催中
- オリジナルカスタムが楽しいタコライスのキッチンカー「ピエニキッサ」
- 開業してすぐの挫折。でも、やりたいことの芯はブレなかった
- 「キッチンカーをしたい!」21歳で受けた衝撃。賛成する人は誰もいなかった
- 「ピエニキッサのタコライス」としての武器を磨き上げる
- 成功した型を躊躇なく変えた現在。次の10年への種まき中
- 現在、ぐるっと回ってフレンチトーストへの原点回帰。新しいチャレンジを続ける原動力は
- インタビュー音声も公開中
- \取り上げてほしいお店を教えてください/
- キッチンカーに関する主な記事
- 開業実績多数!無料キッチンカーセミナー開催中
- キッチンカーの開業相談
- キッチンカーの出店場所をお探しの方
開業実績多数!無料キッチンカーセミナー開催中
オリジナルカスタムが楽しいタコライスのキッチンカー「ピエニキッサ」
マットなモスグリーンの車体に、やさしい暖色の電球がかわいく光る小さなカフェのような存在感。ある日のランチタイム、ビルや敷地の樹々に溶け込みながら静かに営業するそのキッチンカーに、人々が吸い寄せられるように並んでいきます。
タコライスとローストポークのお店『ピエニ キッサ』。渋谷(しぶたに)さんご夫婦が2015年から二人三脚で切り盛りしているキッチンカーです。
奥では夫の直也さんが調理を担当。ご飯や具材を手早く盛り付け、トッピングのチーズを炙りにしていきます。正面販売口からはやわらかい笑顔の妻りえこさんがお客さんの注文を聞き、細かいカスタムの指示を直也さんに伝えます。二人は小さな車内のなか、無駄なくテキパキと動いています。
ピエニキッサのタコライスは、野菜がたっぷり摂れて、いろいろなトッピングを楽しめる「自分カスタム」が楽しいタコライス。国産豚肉の甘辛タコミートに、炙ったチーズが香ばしいアクセントになっています。そして、ボウルの半分ほどが4種類のレタスでもりもりっと埋められていて野菜をたっぷり摂れるのが嬉しいポイント。
チーズやお肉の増量、フレッシュハラペーニョやワカモレといった細やかなカスタムメニューや、無料のトッピングとしてグリーンハバネロ、レモスコ、スコーピオンソースなどの各種タバスコが並び、お客さまは思い思いのカスタムを楽しむことができます。
客層のメインは女性で、列に並ぶお客さんも友人、同僚を連れ立って楽しそうに並んでいます。
今でこそどこに出店しても大人気で、安定して100食以上を提供する『ピエニ キッサ』。
渋谷さんは「キッチンカーをするために、長い長い準備期間があったんです」と言います。
一体どんなストーリーのもと、キッチンカーをはじめたのか。どうやってお客さんに愛される人気店へとなっていったのか。直也さんにお話を伺いました。
【キッチンカー開業8年】ブレないお店のつくりかた
『ピエニ キッサ』渋谷さんのインタビュー音声も公開中です。(34分24秒)記事のダイジェストとなっています。
出典: YouTube
開業してすぐの挫折。でも、やりたいことの芯はブレなかった
ー2015年にキッチンカーを始めて9年目ですね。開業当初のことを教えてください。
もともとコーヒーやカフェが好きで、そういった自分たちの好きなものを形にしようと、フレンチトーストを看板メニューにして開業したんです。
『ピエニ キッサ』ってフィンランド語で『小さな猫』って意味なんですよ。北欧ってめちゃくちゃ寒い国なのに、家具や照明、インテリアにはあたたかいイメージがあるじゃないですか。『ピエニ キッサ』ってあたたかみもあって何かいいな、移動販売で色んな場所を動き回るし、ぴったりじゃん!ってことで、屋号を決めました。
ー今ではタコライスの人気店として知られていますが、最初はフレンチトーストだったんですね。
最初は考えがめちゃくちゃ甘かったんです。イメージするお客さんに合わせて、駐車場や駅前など、帰りに需要がある場所でなら売れるんじゃないかと思って。でも始めてすぐにそれは崩れました。全然売れない、これはほんとにやばいと。
1日売れて5食や6食、10食売れたらすごい、おお、今日は15食売れたぞ!みたいな。麻痺してたんですね(笑)。でも、このままじゃ続かない、どうにかしなければと焦りました。過去キッチンカーのために準備してきたことが全然活かされなくて。
そもそもキッチンカーって、コーヒーや甘いもののイメージだったんですね。でも調べてみたらランチのご飯ものというジャンルがあるとわかって。
ーそれでタコライスを。
フレンチトーストは一旦置いておいて、「一回ご飯ものに舵を切るか」となったときに、「タコライス」というのがピーンときたんです(笑)。
最初からピエニ キッサは「ターゲットは絶対に女性」ということは決めていました。元々カフェテイストで、女性向けのイメージでフレンチトーストにした経緯もありましたし、そのあたりのコンセプトはブレたくなかったんです。
前職の経験から、「ちょっと我慢して、やりたくないものを扱うというのは嫌だ」という思いがありました。やっぱり自分たちの売りたいものを売りたい客層に提供したい。基本的に「カフェメニュー」というイメージがあったので「タコライス」を試験的にやってみようと。今となっては変に考えすぎなくてよかったなと思ってます。
「キッチンカーをしたい!」21歳で受けた衝撃。賛成する人は誰もいなかった
ーそもそもキッチンカーとの出会いはどんなものだったんですか?
父親が土木関係の仕事をしていたこともあり、自分も高校卒業後に建築の専門学校を出て、国家資格を2つとりました。でもそこで、「建築士に一歩近づけた〜!」と思って、完全に気持ちが終わっちゃったんです。資格を取るのがゴールだったんですね。
周りの友達は大手のゼネコンや建築関係に就職が決まったりするなか、自分はその時にはもう建築の仕事をしたくなくなっていて。就職どうしよう、と。21歳のときですね。親も「ええ?!資格とったでしょ」みたいな。「何するの?」って。
そのまま就職活動せずに卒業しちゃって、とりあえず大阪に出ました。やりたいことを探すというか、派遣したりイベントスタッフしたり倉庫でピッキングしたり、フラフラしてましたね。自分探しじゃないですけど(笑)。
そんなとき、兵庫で移動カフェの先駆け「モトヤエクスプレス」さんというコーヒーの移動販売と出会って衝撃を受けたんです。今も代官山の駅前でずーっとやってますよね。
「コーヒーを売っている車」っておもしろいなと純粋にワクワクして。社長に「一回中見てみるか」って乗せてもらって、軽バンの小さい車の中にエスプレッソマシーンがバーンって積んであって。うわ、かっこいい!と。外見からはわからない中の感じが、シルバーの光ったものがいっぱいあって、パチパチするボタンとか。映画も好きだったので「これスターウォーズのアレじゃん!」みたいな。最初の衝撃が凄くて。
当時アルバイトしか募集していなかったのですが「正社員で働きたい!」と熱意を認めてもらい採用されました。
ーモトヤさんの影響力えぐいですね(笑)
めちゃくちゃえぐいです(笑)。フラフラしていた自分をこっちの方向だ!と向けてくれましたから。楽しかったですよ。こういう仕事があるんだって。あるんだってほど広まってなかったんですけど。
当時のモトヤさんにはめちゃめちゃでかいトラックやトレーラーもあって。社長とでっかい外車に乗って、ボックス積んでふたりで福岡のイベントに出店したり。楽しかったですね。
実際にやってみて、自分の中で「こういう仕事絶対来る」、「自分はこういう仕事をしたいな」って思いました。求めてる人のところに行くっていうのもいいし、もともとちょっと特殊な仕事をしたいという思いもあったし、純粋になんかこれ面白そう!と。
当初から「自分でもキッチンカーやりたい」と周りに言ってたんですけど、当時の兵庫とか関西ではまだまだ認知されていなくて、「なにそれ趣味でやるの?」って感じでした。
「何の社会経験も積んでないのに、自分のしたいことにいきなり行くなんて」とか、「色々経験した後ならわかるけど、21歳で初めからやりたいことなんて、そんなの甘いよ」とかガツーンと言われて。もうすごい悔しかったですよ。賛成する人は一人もいなかったですね。
でもモトヤさんとの出会いで、「じゃあ自分に何が必要なのかな」と考え、そこから色々と仕事を変えていきました。今からキッチンカーって言っても、建築の専門学校出て何ができるってわけでもなかったので。たしかにこのために一回社会経験を積まないとなと、キッチンカーのためにやるみたいな。その後はいろいろな場所を転々とするんですけど、自分のなかでは全部意味があって会社を決めていきました。
モトヤに出会ってなかったら、まだフラフラしてたかもしれないですね。
ーそれでキッチンカーのための武器探しで転々と職場を変えられたんですね。
キッチンカーは一つのお店なので、料理も数字も接客も、スタッフを雇うとしたらコミュニケーションも必要です。だから、飲食でも安定してて給料のいいところもあるんですけど、形が全部決まっていてマニュアル通りに動かないといけないところに行っても意味がないなと思って。ここでは調理スタッフとして働いて、次は数字を管理したいから店長としてとか、目的があって仕事を選んでいきました。
自分の中では転職にはそういう意味づけがあったんですけど、周りからは「もうちょっと頑張ろうよ、早く辞めすぎじゃない?」とか「もう少し続けたら給料とかボーナス上がるかもよ」とかお金のことばかり言われましたね。自分の中ではお金じゃ全然なかったんですけど。
ーそのころは既にご結婚されていたんですよね。奥さまの反応は?
妻も「面白い仕事したい」というタイプでしたし、僕がどういうことを考えているのかわかってくれてたので、「ああ、また変えるのね」みたいな感じで何も言わなかったですね(笑)。
ー奥さまのご理解があったとはいえ、周囲からあれこれ言われてもブレずに進めたのはなぜでしょうか?
昔から「時間が勿体無いと思うことはしたくない」という性格で。「実績を積むためには3年」とかよく言うじゃないですか。目標に向かっての我慢ならいいけど、数字だけで我慢するのは時間が勿体無い、「それやめた時に自分に何が残るの?」って思ってました。1ヶ所にいられないタイプだな、と思われていたかもしれないんですけど、時間は有限なので、「ここではもう学ぶことはないな」と思ったら次にいこう、と。昔は「1ヶ所でずっと働くのが偉い」とか、転職を繰り返す人はイメージ良くなかったですよね。でもそれは偏見だと思ってます。キッチンカーをやるために、「自分はこういうことをやってきた」という武器をつくるんだ、というのはブレてなかったですね。
ーそういった経験すべてを凝縮した形で前職のグローサリーストアで店舗を任されたんですよね。
そうなんです。前職では西麻布にあったオーガニックのグローサリーストアに勤めていました。まだ日本では広まっていなかった自然派食品なんかを先駆的に扱っていたり、当時コールドプレスジュースを日本に持ってこようとした会社で、かなり独特な会社でした。
オーガニックの文化なんてまだ日本にほとんどないのに、会社の方向性として「これからはオーガニックだ!」と。棚に陳列しているものすべてオーガニック。お弁当も調理の人を雇って油も調味料も全部オーガニックでした。不動産事業もしてたので、そういう新しい挑戦もできてたんですね。
そんな未開拓な分野で店舗経営を任されて、難易度は高かったですけど、やりがいはめちゃくちゃありました。この会社では「人生一度きりだからね」というフレーズがすごくあって、自分も、先が見えない感じや「まだない仕事をする」ということが好きだったので、そういう精神や仕事を目の当たりにしてすごいなと思いましたね。仕事に対する考え方をそこでけっこう変えられて、「まだ認められてない仕事に手をつけていきたい」と思いました。
ただ、自分のやりたいことに対しての熱中はなかったんですよね。正直僕は「オーガニックが好き」というタイプの人間ではなかったので、店舗経営には興味あったけど、オーガニックには興味なかった。ポジションは色々あったけど、組織って必ずしも「自分のやりたい」が通るわけじゃないじゃないですか。だったらもう自分でやったらいいじゃんと、会社での「人生一度きり」という言葉に突き動かされた部分も大きいです。キッチンカー、そろそろやらなきゃと。
ー冒頭で、フレンチトーストからタコライスに変更する時に「ちょっと我慢して、やりたくないものを扱うのは嫌だ」という気持ちからメニューを考えたとおっしゃっていたのはこの経験からなんですね。
店舗管理とか、数字を追うのは本当に好きなんでよかったんですけど、扱っているものが自分の染まっていないオーガニックで、どう数字を作っていくかというのはなかなか…、やってる人がハマってないと響かないじゃないですか。ただ、「新しいことを切り拓く、現状で満足しない会社」というのはとても刺激的で、気持ちで乗っかれる仕事でした。
「ピエニキッサのタコライス」としての武器を磨き上げる
ーそうしてコツコツ準備を重ねて夢のキッチンカーをはじめたものの、まずフレンチトーストがうまくいかず…当時のお気持ちは?
うまくいかなくても止まっている場合じゃない、この挑戦が失敗してしまったら、社会人として就職しないといけないと思っていたんですね。
でも、ぜっったいにそっちには戻りたくない。
だってそれは、モトヤと出会って20代のころから積み上げてきたものすべてが否定されるみたいなことなので。なんとしてもここに生き残らないといけない、「売上あげなきゃ、儲けなくちゃ」じゃなくて「生き残る」みたいな感じでした。ここで否定されてしまったら、これまでの時間がもったいないというのもあって、必死でしたね。
ーフレンチトーストからタコライスに転身して、どうやって軌道にのっていったのでしょう?
最初の1年で試行錯誤している時、すごく少ない売上だけど、近所のクリーニング屋のおばちゃんとか、「美味しいね」と毎回買ってくれる人が2、3人いたんです。この人たちにはウケてるんだからブラッシュアップすればいけるのではないかと。常連さんの声を聞いて、改良を重ねて重ねて。ゆっくり試験的にやれた期間がありました。
そんな風に準備が整ったタイミングで、ランチ出店をサポートしてくれるSHOP STOPのようなサービスにも登録していきました。
ーでもそこから軌道に乗せていくのは大変だったでしょうね。
ランチをするってなってまず何が大変って場所がなくて、昔からやっている方達もたくさんいたので、自分たちが入る隙間もなかったし、自分が思っている以上にタコライスを扱っている店が多かったのもあって。
「ピエニ キッサのタコライス」を他とどう差別化するのか、ということに二人でかなり向き合いました。沖縄風タコライスでもメキシカンでもないなと。女性がターゲットとした時にどう自分達のオリジナルを出せるのか。原価を絞りすぎて自分達のしたいことができなかったら意味ないし、女性向けのカフェメニューのタコライスってどんなふうに差別化できるだろうってことを、とことん考えていきました。
自分達の中で女性をターゲットにした方がいいというのはずっとあって。女性のほうが、自分達が思い描いているものについてくれてるって感覚があったんです。そのうち、女性は「ご飯より野菜でお腹いっぱいになりたいのでは」という前職の経験からも感じていたことを軸にしてみようと。「ご飯少なめでお野菜多めで豚肉は国産」というスタンスで行けば女性のお客さんがついてくれるだろうと差別化の軸を定めていきました。
そうして売りを定めて営業を続けながら毎回の営業後に二人で、「次はこうしよう」、「あのお客さんがこうだったから今度はああしてみよう」っていう気づきを出し合って、次の営業には試すというようなことをずっとやってました。
そうやってどんどん食数、売上が上がっていきました。自分が予想しているものにハマってくると「よしいける!」と手応えが出て。女性にウケているなという感覚をつかみながら、ダメなところはコロコロ変えていきました。
ー手応えを確かに掴みながら、変化を起こしていったんですね。慎重ではありつつ大胆というか。昔からそうなんですか?
性格はこういう感じですね。昔からずっと神経質で心配性なんですよ。心配性な割に、心配させることはするんですけど(笑)めちゃめちゃ周りには心配かけてるんですけど、自分は心配してないんですよね、ブレてないんで自分は心配してない。わかんないけど「こうしたい」っていうのしか見えてなかったんです。
ーそうして試行錯誤を繰り返していったんですね。何か突破口となるような体験もあったのでしょうか。
一人が一人を連れてきてくれたら…。その二人がまた一人ずつ連れてきてくれるためには…みたいなことを地道に積み重ねていきました。
それが赤坂のオフィスビルと八王子の大学の現場でハマったんです。どちらも最初に出た時は20食行くか行かないかという厳しい場所でした。でも、当時は稼ぎたいというのは正直なかったです。とにかくこの仕事を継続するためにどうしたらいいのかと、必死でやってました。
結果的にこの2つの現場での試行錯誤によって実績を積んで認められるようになりました。この2つの現場が今を作ってくれていると思っています。
↓ ↓ ↓ 具体的な改良ノウハウについては下記の記事でご紹介しています↓ ↓ ↓
キッチンカー開業後の売上改善術 一人が一人を連れてきてくれるには?女性ターゲットと定めたタコライスをどう磨き上げたのか、お客さんの声をどうやって取り入れていったかなど、必見です! https://media.mellow.jp/articles/163
成功した型を躊躇なく変えた現在。次の10年への種まき中
ートライ&エラーを繰り返して、人気店となって実力を認められて軌道にのっていっての現在だったんですね。でも、いま色々変えていってるんですよね。
大きいものでいうと、野菜の種類をガラリと変えましたね。
ー上記のノウハウ記事で変更内容については詳述したのですが、「歯応えや満腹感を得られる野菜たっぷりタコライス」として大人気になり、その後順風満帆だったのに、その野菜を変えたと聞いたときは驚きました。変えるきっかけは何かあったんですか?
色々あるのですが、きっかけとしては、正直仕事量がすごかったことですね。働く時間が、飲食や販売業、美容師さんなんかもそうだと思いますけど、ブラックになってしまいがち。買い出し行くのにも食数が増えていくと重労働で、時間もかかる。売れるようになる=労働量が増えるということですから。がむしゃらだったし、個人事業主で夫婦二人だからというのもあって、かなり無理してたんですよね。
でもこれは人にやってもらうにはアウトだよな、と。「自分達でやってるからアリ」っていうのはいつか変えなくてはいけないと思ってたんですよね。これは、1台でずっとやっていくのか、2台、3台と広げていきたいのかっていう方針で違うと思いますけど、僕は2台、3台までいきたいなと元々思ってたので、広げるには「オペレーションや準備、仕込み、片付けの単純化に落とし込まくてはいけない」という気持ちが強くありました。
大きくしていくんだったら今のままでは無理だ、どこかでスタイルややり方を変えなきゃ、いい意味で自分達も楽にならなくちゃと。
昔飲食店で働いていたとき、人が足りなくて店長さんがいつもキッチンで仕事してたんですよね。僕も本部に出す資料作りを手伝ったりもしたのですが、いざ会議では店長自身は数字の理由を説明できなかったり。お店を管理している人がお店の中心にいすぎると周りが見えなくなっちゃうんですよね。
そういう状況にならないように、今度は自分がいないベースで色々考えていかないとなって思っています。今したいことっていうのを、本当は外側からできる人間になりたいんです。今は中にも入る、現場にも行くけど、いずれ切り離して考えられたらいいなと考えて、今動いている感じです。
時代って変わるじゃないですか。スタッフの雇い方とかも昔はブラックでも許されたのが、今は絶対アウト。自分が抜けてもいいようにしないと、自分が中心にいても絶対広がっていかないので。35歳までは必死に働くと決めてたので、35までは必死に働いて、積み上げたものを35からはどんどん違うものにしていこうという、そのフェーズとして今2台目、3台目だったり新しい挑戦をしていっているところですね。
ー長く続けるためにも大事なことですね。
売れてる時って結構無理しちゃうんですけど、僕は売れてる時こそ休まないとと思います。仕事のパフォーマンスが落ちますから。自分は同じパフォーマンスのつもりでも、お客様からは違って感じられてしまうかもしれないので。20代の頃より動けなくなっていくのはわかっていますから。いい意味で息抜きしながらしないと、「今だけいい、よし稼ぐぞ!」じゃずっと続かないと思っています。
だから、ちゃんと環境を整えるということは意識していますね。休みと仕事のバランスは、「今がどうか」ということよりも、ちゃんと整えるべきだと思います。
ー成功しているからこそ、切り替えができないってパターンはかなりあると思います。やるかやらないかでしかないですけど、将来に向けて切り替えられたっていうのは、思考のアクセルをかなり踏んだ感じだったのではないでしょうか。
準備期間が長かったですから。ブームみたいなものに踊らされてキッチンカーを始めたわけじゃないので、折れずに続けてこれた。長い目でやるためにどうすればいいんだろうとか、考えていけるのもあるかもしれません。
ーでもうまくいってるものを「変える」ってやっぱり怖くないですか?
もちろん、分からないことがあるなかで変えるのは怖いんですけど、僕らはいま「こういうお客さんにこれがウケてる」っていう手応えがあるので、そういう意味では自信があるので変えやすいというのはあります。
今なぜ売れているのか分からないまま「今いいし」と続けてるだけでは怖いですね。例えば「ここは人通りも多いから売上が立っている」というだけだと、人が少ないところに行けば売上が落ちると思うんですよ。人が多いから売れているってスタンスで維持しているとしたら僕も怖いです。「売れているのは人が多いから」という理由だったらイベントと一緒ですから。
手応えが自分の中にあって、なぜ売上が上がっているのか納得ができての実績というのが大きいです。お客さんを掴んでて、実績があって、だからこそ他でも応用できるって手応えがある。何かを変えても上向きになるという自信もある。売上を立てた時の自分の中の納得感ですよね。
悪い時って「なんで悪いんだろう」って考えるのはよくあるんですけど、それだと遅い感じがするんですよね。それに、いい時って忙しいから「よかったよかった、明日も頑張ろう」ってなっちゃうんですけど。僕はいい時こそ考えた方がいいと思います。今はランチ現場すべて、自分の中で「ここはこういうお客さんだからハマっている」という感覚があるので、ストレスはないです。
ーなるほど、「なぜ売れているか」を自分の中で分析して納得しているから変えるのが怖くないんですね。ハマる現場の精度が高くなっていきますね。
最近出た現場で「あーハマらなかった」っていうもあるんですよ。ある病院の現場ですね。女性が全然いなかったんです。8割が男性で。出店するか迷ったんですけど、病院だからヘルシーなものもウケるかもと思って、やれることはやってみようと出てみました。でも「お肉ないんですか」って最初に言われちゃったんですよね。お肉はうち弱いんだよな〜と思いつつ、でもせっかくだから色々試そうと思って、メニューにはあったけどそこまで力を入れていなかった「ローストポーク」に力を入れてみたりしました。
他の病院も行ってみましたが、やっぱりお肉って言われるんですよね。最初のイメージで病院はヘルシーもウケるかなと思ったんですけど、フタを開けたら全然違いました(笑)。でもそれもいい経験でしたね。ハマらないってわかったのでもう病院系は行かないと思います(笑)。自分に合っているか合っていないかを追求しないとだめですね。
現在、ぐるっと回ってフレンチトーストへの原点回帰。新しいチャレンジを続ける原動力は
ー下積みを経て、変化を起こして、そして今、なんとフレンチトーストに戻ってきたわけですね。
フレンチトーストがある程度やれると報われるって感じですね(笑)。2015年に開業してからの伏線を回収しているみたいな。ああ、あのとき我慢したけど、環境作ってから戻れて、結果よかったねみたいなふうになれたらなと。
ー先日初出店されたんですよね。いかがでしたか?
雨降って天気も悪かったのもあってちょっと…(笑)。でも次色々変えたら少しは良くなるなと思ってます。アウトレットモールへの出店だったんですけど、お子さんが食べたいってなってくれるけど、お母さんが見てやめるというパターンが多かったんですよね。そこの価格帯はワンコインがほとんどだったようなので、ここに来るお客さんに対しては価格が高すぎたなと思ってます。安くないと難しい場所ってことがわかったので、そこは原価調整して合わせます。高い路線やめて手頃にしてやってみようかなと。全部手頃にするというよりは幅を持たせてみるつもりです。
ーキッチンカーらしい挑戦の仕方ですね。決め切らずにスモールに試しながら、ハマりどころを見つけていく。
タコライスである程度経験を積んでたのでいけるかなと思ったけど、やっぱり全然ダメでしたね(笑)。商材変えて、場所変えてだとやっぱり1からだなと。
ーでもなぜ今またフレンチトーストに挑戦されたんですか?
「いつかやらないと」と思っていて、ずーっとタイミングを見てたんです。実績をある程度積んでから新しいことをしようと。その後コロナ期間で動けない時間が長かったんですけど、「いつかは」と思いながらランチ営業をしてました。
いま、フレンチトーストも含めて3台を動かしていますが、2台はランチでしっかり営業しながら、3台目も、ターゲットはブレずに女性で、自分達のやり方にはまるところ、やれることをちょっとずつ探していこうかなと。
ーでも満を時して再開できて、どんなお気持ちでしたか?
いやー、まだあんまりないですね(笑)。忙しくて大変で。やっぱオペレーションも重要だなと。どう出せるかがやっぱり大事。大変だけどそれを理由にしちゃいけないなとは思ってますけど。
でもやっぱり新しいことした時って変化が出るので、やりがいを感じますね。落ち着いたらまた新しいことをしたくなるんじゃないかな(笑)。
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8年越しの想いを乗せた新しい挑戦のさなか、うまくいかない大変さを痛感しているような困った声。でも、渋谷さんの表情も声もイキイキと充実しています。うまくいかなくても全然下を向いてないし、へこたれてもいない。これまでの実績が確かな自信となって、乗り越えられるだろう新しい困難を楽しんでいるかのよう。
それにしても、本当に立ち止まることなく、どんどん新しいテーマを自分で見つけて進み続ける渋谷さん。その原動力はなんなのでしょう。
渋谷さん「楽しいこととか、したいこと、気持ちが乗ることに対して、自分は何ができるのかってことをずっとやっていますね。自分のテリトリーじゃないことは基本しないんです。無理してやっても、得意な人がやったら2、3時間で済むかもしれない。それこそ時間の無駄なんで。
基本的には楽しいこととか、自分が得意とすることをやった方がぜったい伸びる。そっちに時間使った方がいいなって思ってるんです。それこそコーヒー好きなので、カフェだったり、新しいお店がオープンしたら行ってみて刺激をもらったり。そうしてインプットしていてポっと出てきたアイデアを、「じゃあ自分はこういうことできないかな?」と考えてます」。
なるほど、だから困難に直面しても生き生きしているのですね。
渋谷さん「昔は『あれやりたいな』と思ったことも、環境が整ってなくて出来なくて、ちょっと経ってそれを誰かがやっちゃってて「あー自分もやりたかったのに」みたいなこともたくさんありました。
僕は現状維持が一番危ないって思っていて。当時は自分も準備期間だったんでタイミングが合わなかったんですけど、今はそれに合わせていかないとと思っていますね」。
渋谷さんの表情は、また次の10年回収の道中を見据えて、どこまでもすがすがしいものでした。
- 火曜日:SHOP STOP南青山(3rd MINAMI AOYAMA)11:30 〜 14:00
- 水曜日:SHOP STOP神谷町(ヒューリック神谷町ビル)11:30 〜 14:00
- 金曜日:SHOP STOP銀座(銀座6丁目スクエアビル) 11:30 〜 14:00 SHOP STOP京橋(関電不動産八重洲ビル) 11:30 〜 14:00
※ フレンチトーストは不定期出店のため、出店情報はお店のSNSをご確認ください ※ 2023年8月現在の出店スケジュール ※ 最新の出店情報はSHOP STOPのスマホアプリからご確認ください。 ※ 下記の「このキッチンカーをお気に入りに追加」ボタンからお気に入り登録可能です。
インタビュー音声も公開中
【キッチンカー開業8年】ブレないお店のつくりかた
『ピエニ キッサ』渋谷さんのインタビュー音声も公開中です。(34分24秒)記事のダイジェストとなっています。ぜひお聞きください!
出典: YouTube
キッチンカー開業後の売上改善術 一人が一人を連れてきてくれるには?女性ターゲットと定めたタコライスをどう磨き上げたのか、お客さんの声をどうやって取り入れていったかなど、必見です! https://media.mellow.jp/articles/163
\取り上げてほしいお店を教えてください/
企画の参考にさせていただきます。