自分の豊かさに向き合い、自ら選んだ道を進んできたキッチンカーの方々。そんな彼らの生き方のなかに、自分らしく生きるヒントがあるはず。それぞれの豊かさを、それぞれの想いで叶えるひとに迫るシリーズです。
目次
- 開業実績多数!無料キッチンカーセミナー開催中
- 手ごねハンバーグのキッチンカー『PARLOR ZONO』営業風景
- ダイレクトに自分の作ったものの反応が見えることがうれしかった
- みんなは富士山に登ってるけど、俺は違う山でいいやって気付いた
- 明日が人生最後の日だってなったら
- \取り上げてほしいお店を教えてください/
- キッチンカーに関する主な記事
- 開業実績多数!無料キッチンカーセミナー開催中
- キッチンカーの開業相談
- キッチンカーの出店場所をお探しの方
開業実績多数!無料キッチンカーセミナー開催中
手ごねハンバーグのキッチンカー『PARLOR ZONO』営業風景
「日本一うまいハンバーグ、食べてって」
道ゆく人にそう軽快な声をかけるのはPARLOR ZONOの店主、中園さん。黒いキッチンカーに、似顔絵の入ったロゴ、メニューはビストロの黒板のような手書きで、料理の写真や装飾は一切なし。自慢の品手ごねハンバーグについても特段アピールしているわけでもないシンプルな店構え。それでも、お客さんは全く物怖じのない自信あふれる笑顔とビッグマウスに誘われて列に加わっていきます。
「この時間に来てくれたらサービスしがちなんで、また来てくださいね」
手早くハンバーグを用意しながら、心を掴む会話も忘れません。
「日本一うまいハンバーグ」という情報だけで、いまひとつどんな料理が出てくるのか半信半疑で並んだお客さんも、盛り付けられたランチボックスを差し出された瞬間、「わぁ」と歓声をあげ、目を輝かせます。
ご飯の上にどかんと乗せられた大きな手ごねハンバーグ、ランチボックスからはみ出すような野菜や、ハンバーグの上にうずだかく盛られた’気まぐれ”メニューの野菜のソース。
中園さんからランチボックスを手渡された瞬間、この小さなボックスのなかに期待以上のワクワクが詰まっていることが伝わり、「あのビッグマウスはうそじゃなかった」「のってよかった」と、小さなカケに勝ったようなうれしさも感じられるのではないかと思います。
そんなお客さんを魅了してやまないハンバーグは、毎朝5時からひとつひとつ手ごね。100食以上出る現場では30kgの肉だねを仕込んでいるとのこと、さながら筋トレのようです。
粗挽きの牛100%のひき肉と、牛バラ肉の塊をミックスし、玉ねぎやパン粉など、オリジナルのつなぎを混ぜ合わせています。この配合が、肉肉しいながらもジューシーな唯一無二の手ごねハンバーグの味や食感を決めています。
そして、鉄のフライパンで両面を焼き色がつくまで焼いたらオーブンで焼き上げます。こうして7割ほどの火入れを仕込み場で行い、営業現場に行くまでの時間の余熱と、現場でのオーブンでの仕上げで良い状態に仕上げたものをあつあつで提供しています。
メニューはこのハンバーグとご飯、サラダ、セルフサービスのソースをかけても楽しめる『ハンバーグランチ(900円)』と、中園さんが”気まぐれ”に考案する野菜をつかった惣菜(ハンバーグソース)を選べる『気まぐれハンバーグランチ(1,000円)』、ハンバーグランチに目玉焼きがのった『目玉焼きハンバーグランチ(1,000円)』から選べます。
”気まぐれ”は文字通り中園さんの気まぐれに繰り出され、トマトのマリネにバルサミコをかける『フレッシュトマト』、えのきの甘酢ソースとオリジナルタルタルを合いがけにした『南蛮』、大根おろしにオクラとワサビを加えた『オクラワサビ』など、ハンバーグに合う付け合わせとして多彩な組み合わせが登場します。ハンバーグにもしっかりと味がついていますが、気まぐれソースはどれも絶妙なクセになる味付けで、ハンバーグのお供に最適。ご飯もどんどん進み、いつもいつもその味の演出に脱帽してしまいます。そのことを伝えると、
「味付けってセンスですよね。怖いです、自分の才能が」とにやり。
中園さんはいつもこんな感じ。「昔っから変わらないですね、ずっと生意気だって言われてきました。まあ最近になってやっと年齢と実績が伴ってきたってとこですかね(笑)」
キッチンカーを始める前、東京のキッチンカーのランチをひたすら食べたという中園さん。
「圧勝できるな、って思いましたね。全員やっつけられるって」
いつでもどこでも気持ちいいまでの自信と気ままさを纏ったキャラクター。この空気に触れると自然と笑っちゃったり、元気になれてしまうのです。
中園さん「若い頃は一流の料理人になってやろうと思ってましたね。でもある時気付いたんです。そこまでって必要ないなって」
どんなストーリーを経て、いまキッチンカーの道を歩んでいるのでしょうか。中園さんにお話を伺いました。
ダイレクトに自分の作ったものの反応が見えることがうれしかった
ーキッチンカーをはじめたのはどんな経緯だったのですか?
キッチンカーをやりたいと思って東京に出てきたんですよね。それまでは19歳から8年くらい沖縄に住んでました。
ー沖縄にはなぜ??
遠くへ行きたかったんです(笑)
ほんとにいきなり行ったんで、着いた時の所持金がすでに4万円しかなくて。なんとなくハローワークへ行ったらできそうなのは引越し屋か飲食かなぁと。お金がないから、飲食店ならまかないがあるだろうなと思って、包丁もまともに使えないような状態で働き始めました。
引くほど給料低かったですよ。でもそのまま地元に戻るのも嫌だったんで、意地でやってましたね。沖縄で出会ったいろんな人に世話になりました。
ーどのように料理人としてのキャリアを積んでいったのですか?
そのお店は居酒屋ではあったんですけど、本格的なピザ釜とかあるようなおしゃれぶった店で。当時の自分はピザといえば宅配ピザくらいしか知らなかったので、衝撃でした。
最初の1,2年はこのまま料理を続けていくつもりもなく、とりあえずやっていただけだったんですけどね。ただ、ダイレクトに自分の作ったものの反応が見えることで、それまで人に感謝されるとか、「おいしい」とかって表現されたことのなかった自分にとっては、それがやりがいになっていきましたね。
ーとはいえ、0からのスタートで大変だったでしょうね。
飲食店って、本当にいきなり人が辞めるんですよ。あの人がやってたことを今日から自分がやらなくちゃいけないっていう状況になるんで、やるしかなかったって感じですね。でも昔からこんな感じなんで、できないくせに謎の自信はあるわ、態度はでかいわで生意気だったと思います。徐々に俺のビッグマウスに腕も追いついていった感じでした(笑)
作り直したりするのが面倒で嫌だったんで自分でもいろいろ勉強しましたね。まぁ、基本が間違っていなければうまくなりますよ。常に人手不足だったんで、枠なく色んなことできて幅が広がりましたね。
みんなは富士山に登ってるけど、俺は違う山でいいやって気付いた
ーキッチンカーとの出会いを教えてください
徐々にもっとレベルの高いことやりたいなと思って、ピザで一流になりたいなと思ってサルヴァトーレで8年くらいピザの修行をしました。
ただ、人に指示されるのが苦手だったり、普通がイヤとか、みんなが選ばないことを選びたいみたいなところは昔からあって、キッチンカーもずっとやってみたいなって思ってたんです。気ままな感じ、自由さがいいなと思って。
最初は沖縄でキッチンカーやろうかなとも思ってたんですけど、レベルの高いキッチンカーは東京かな、というのもあって26、7歳のときに東京にきました。
サルヴァトーレではキッチンカー担当もさせてもらってたんです。ある時、イベントで1日大手町のオフィスビルに出店したんですよ。売れて30〜40食くらいかなって思ってました。 そこでランチで出るキッチンカーの人たちと一緒になって。『GRILL TOKYO』さんとか『ボナペティ』さんとか、今でもバリバリの人気店の人たち。
昼をまわったら、急に空気が変わって、はじまったぞと。彼らが横で怒涛のように売ってるわけです。これは、それぞれ100食余裕で出してるぞと。それで、ランチ営業が終わると颯爽と帰っていく。それまでキッチンカーの「ランチ」という概念がなかったんで衝撃でした。
そこから、本腰入れてキッチンカーやりたい!と、休みの日はオフィスのランチに出てるキッチンカーをたくさん食べ歩きました。で、いつもの自信で、これは本気出せば圧勝できるな、と(笑)
めちゃくちゃ尊敬する『TOKYO PAELLA』さんとか、キッチンカー最強だと思ってる『MOCHIKO Chicken Factory』さんとか尊敬する先輩方にも出会って、全員ぜってー倒す!って気合い入れて始めました。
ー「一流の料理人になりたい」という想いにも何か変化もあったのでしょうか?
東京に出てきてトップのレベルが高すぎるし、追いつけない、そのノリにもついていけないって思いもありましたね。でも挫折っていうより、気づき。自分はそこを目指すのが本当にやりたいことなんだっけ?っていう。あ、自分にとってそれって必要ないかもって。みんなは富士山に登ってるけど、俺は違う山でいいや、自分のルールで、自分のやり方で登って行くアルピニストになりたい!って思っています。
ー今後の展望はありますか?
「台数増やさないの?とか、もっと事業拡大すればってよく言われるんですけど、それはないですかねぇ。自分の見切れる範囲で、ランチのキッチンカーNO.1を目指しますよ。東京の尊敬している先輩方もはやく倒さないと(笑)まあ、ガチで気まぐれなんで、いきなり言ってること変わるかもしれないですけど」
明日が人生最後の日だってなったら
「仕事は全部愛だと思ってるんで」と中園さん。
最初はこのまま料理を続けていくつもりもなく、とりあえずやっていただけだった。ただ、ダイレクトに自分の作ったものの反応が見えること、人に感謝されるとか、「おいしい」と表現されることが、すごく嬉しいものだと気付いていったのだといいます。
「キッチンカーなんてもろにそうなんですよ。ダイレクトにお客さんの反応が見える。お弁当を渡した時の表情を見るのが好きなんです。お金いただいちゃってこんなに嬉しくなっちゃっていいのかなって気持ちです。キッチンカーで独立して5年くらい経ちますけど、ずっと楽しいですね」
愛情を込めた分だけ愛が返ってくる、受け入れられる瞬間がある、そんな時間を楽しんでいるかのように、キッチンカーからのぞく中園さんの姿はいつも楽しそうです。
「キッチンカーをやる人には愛を持ってやってほしいなって思いますね」
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インタビュー終わり、キッチンカーの仕事がライフワークのような中園さんに、ふと趣味や好きなことについて聞いてみると、「仕事が趣味みたいなもんですからねー。あ、キャンプは好きですね」とのこと。
その後、少しだけ考え込んでからこう答えてくれました。
「俺、明日が人生最後の日だってなったら、普通にいつものようにランチ営業して、夜は焚き火に行くと思います。
スティーブ・ジョブズが言ってたんですよ。『人生最後の日に何をしたいか、それが今やっている仕事じゃなければ不幸だ』って。さすがジョブズくらいになると俺のレベルに追いついてくるなって」
不敵に笑ういつもの中園節で締めくくり。
かと思いきや、
「今だから言えることですけどね」と、チャーミングな笑顔を見せてくれました。
\取り上げてほしいお店を教えてください/
企画の参考にさせていただきます。