キッチンカーの店主はストーリーの宝庫。こだわりの味と同様に、その生き方、ライフスタイルには十人十色の味わいがあります。
今回は、ご夫婦でキッチンカーを営む3店にお話を伺いました。
目次
- 開業実績多数!無料キッチンカーセミナー開催中
- 夫婦で共にする「キッチンカー」というライフスタイル
- 【case1】自由が丘で58年愛された中華料理の名店キッチンカー『南国飯店』、諸さんご夫妻の場合
- 上海風中国料理『南国飯店』さんの味
- キッチンカーに挑戦したきっかけ
- キッチンカー1周年を迎えて
- 夫婦でキッチンカーをしていてよかったこと
- これからの『南国飯店』
- 【case2】33年目、夫婦経営の老舗からあげキッチンカー『gotoQ』、須藤さんご夫妻の場合
- 33年目の老舗
- ご夫婦の役割分担
- ご夫婦で選んだいまの道
- 【case3】若くしてキッチンカーをはじめ早11年、鉄板鶏飯『Little Kitchen Soleil』、北河さんご夫妻の場合
- 20代でキッチンカーを開業し、キャリア11年
- ご夫婦でキッチンカーをやっていてよかったこと
- キッチンカーに関する主な記事
- 開業実績多数!無料キッチンカーセミナー開催中
- キッチンカーの開業相談
- キッチンカーの出店場所をお探しの方
開業実績多数!無料キッチンカーセミナー開催中
夫婦で共にする「キッチンカー」というライフスタイル
キッチンカーにはご夫婦で切り盛りするお店がたくさんあります。どんなストーリーを経て、生活に加えて仕事という大部分の時間も共有するに至ったのでしょうか。
今回は、キッチンカー開業2年目の諸さんご夫妻、開業33年目の須藤さんご夫妻、開業11年目の北河さんご夫妻にお話を伺いました。それぞれの豊かさを、キッチンカーという舞台で表現する3組。ご夫婦で共にするキッチンカーというライフスタイルを垣間見ませんか?
【case1】自由が丘で58年愛された中華料理の名店キッチンカー『南国飯店』、諸さんご夫妻の場合
上海風中国料理『南国飯店』さんの味
つややかなタレをまとった豚バラ肉の角煮が4枚のった『角煮ごはん』は、店舗でもふるまってきた人気メニュー。ネギをいれた鶏ガラのスープで下茹でし、豚肉の臭みや脂を落としたあとにタレを加えて1時間以上の時間をかけて蒸しあげています。
チャーシューのような噛み締めたい食感を楽しめつつも、とろけるやわらかさに仕上げられた絶品の一皿。深い飴色の見た目から濃いめの味を想像するかもしれませんが、濃さとは無縁の上品な味わい。付け合せのしいたけの旨煮、野菜のナムル、炒り卵もやさしく、満足感いっぱいです。
自由が丘で長年愛される中華料理店を営んできたおふたり。どんなきっかけでキッチンカーに挑戦したのでしょうか。
キッチンカーに挑戦したきっかけ
2021年2月、自由が丘の中華料理の名店『南国飯店』が閉店。惜しまれつつ58年の歴史に幕を閉じました。
迎えた最終日、閉店の噂を聞きつけたお客さまから、たくさんのお問い合わせが寄せられたこともあり、「品切れを出さないように」と食材を発注し、大量に仕込んでその日を迎えたという諸(つー)さんご夫妻。お客様に残念な思いをさせずに済んだものの、食材が余ってしまったそうで…。
麻美さん「閉店した翌々週だったかな、余った食材を使ってテイクアウトで限定復活をしたんです。お店で振る舞うより安くしてね。そうしたら、お客さまから『こういうのができるなら持ち帰りやってほしい!』という声がたくさん届きまして…」
ご夫妻は、お客さまからの声を受け、長年共にお店を切り盛りしていた調理場のチーフと相談しながら、「これまで通りにお店を維持するのは難しいけど、自分たちまだまだ余力あるね」と話し合いました。
ちょうどその頃に、たまたま道ばたの掲示板で、世田谷区とキッチンカーの取り組みについての貼り紙を発見。「キッチンカーだって!」と、新たな選択肢が生まれました。
そして閉店から9ヶ月後の2021年11月、『南国飯店』はキッチンカーとして復活。現在は自由が丘の店舗は仕込み場として稼働しつつ、週末限定でテイクアウト営業をしながら、平日は街から街へ、キッチンカーでその確かな味をふるまっています。店舗のファンだったお客さまもキッチンカーを追ってやってきてくれるそう。
キッチンカー1周年を迎えて
根雄さん「1年目は訳もわからずでした(笑)。お店と比べて朝夕の荷物の積み下ろしなど力仕事も多いですし、2年目を迎えて体力的にもやっと慣れてきましたね。
最初の数ヶ月は余裕なく、行って売るだけ、みたいな状態でした。過ぎた日の販売データを見てるだけ、という感じで。でも、どんな仕事もそうですが、春夏秋冬、一巡りやってみないとわからないですから。とはいえ、2回目の冬を迎えましたが、始めたばかりで大変すぎた去年の冬の記憶はほとんど無いのですけどね(笑)。
まあやっと、他のキッチンカーの方々との出会いも増え、情報交換もしながら、あーだこーだと言いながら改良する余裕が少しは出てきましたね。」
夫婦でキッチンカーをしていてよかったこと
麻美さん「ケンカしながら、知恵を出し合いながら、良いか悪いか意見を出し合って改良できるところですね。うちは調理場のチーフも家族同然でやっているんですが、『味がこう』とか『盛り付けがどうだ』とか、『お客さんからこう言われた』とか、家族同士だと言いやすいですよね」
根雄さん「言ってくれるから僕も気付けますね。お客様目線、女性目線というのはうちのヤツのほうが掴んでますから」
麻美さん「言うと黙っちゃうことも多いですけどね(笑)。私が言われることももちろんあります。お互いに言われたことには『そんなことない』と反発もします。でも、お客さまにとってどうかという点が大事ですから、言われるとありがたいのでちゃんとお互いに取り入れてます。
『自分たちでやっている』という責任感をそれぞれが持ち、良くするためにはケンカになったとしても意見を言い合う。お店のときからそうやってきました。スタッフからですと気づいてもなかなか言いにくかったりすることもあると思いますが、気を遣わずに言い合っていますね。
お店でも、主人は調理場もホールにも立っていたのですが、調理場に入るとやはり調理場目線になることもあって。あと、主人とチーフは男性目線ですから。ホールの自分が、『買う立場、お客さま目線ではこう』というのをちゃんと伝えるようにしてきました。よくするためにそれぞれが言い合う。そうしたスタイルは今も変わらずですね 」
これからの『南国飯店』
根雄さん「うちは3人娘で、お店を引き継いでほしいというのは親のエゴだなという想いもありました。味を継ぎ店を任せられる人がいないので、良いときにやめようと閉店を決意しました。
長女がいづれやりたいと思っていたと言ってくれて、キッチンカーをはじめたときから長女も含めて家族3人でローテーションを組んでいました。今は子供が生まれたばかりで育児に専念していますが、早く復帰したいと意気込んでくれてます。いつか引き継ぎたいと。僕たちもできる限り続けるつもりです」
麻美さん「主人と娘が現場のときは私が孫を面倒見て、など3人でローテーションしていました。家族で協力し合えると、なにかあったときでもフォローしやすいのもいいですよね。キッチンカーでもお店でも、家族で『南国飯店』を続けられて感謝しています」
お店を閉店したときも、復活したときも。キッチンカーの改善のために意見を言い合うときも。『南国飯店』を愛してくれるお客さまの顔をいつも思い浮かべているおふたり。お話を聞いている間に、何度もお客さまとのエピソードを話してくださいました。
夫婦として、家族として、大事なものを共有しあい共に歩む姿に、絆の深さの秘訣をみた気がしました。
キッチンカーでは品川、赤坂、世田谷等に出店中(2023年1月現在)。
夫婦でキッチンカーを営むカタチもそれぞれ。
ここからはご主人にお話をお聞きした2店舗をご紹介します。
【case2】33年目、夫婦経営の老舗からあげキッチンカー『gotoQ』、須藤さんご夫妻の場合
33年目の老舗
『gotoQ』のからあげは、一つ約50gと大ぶりでジューシーなガッツリ系ながら、米油でからっとヘルシーに仕上げています。小麦粉を一切使用せず、揚げ物に天敵の「胃もたれ」を極限まで減らしながら「胃に優しいからあげ」を実現するために、衣と揚げ油についてこだわりをもって選別しているそう。そして、顧客が飽きないようにと考え抜かれたソースバリエーションの豊富さも魅力です。
ご夫婦の役割分担
二人で一台ずつのキッチンカーを稼働している須藤さんご夫妻。主に真男さんがアイデアを出し、愛美さんに相談して決めるというスタイルなのだとか。
真男さん「嫁さんの味のセンスに絶対的な信頼を持っているので、どんなメニューをつくるときも必ず相談してますね。自分で何度も食べてると迷っちゃうでしょ。試作して、提案して、ダメ出しもらって、改善して、大量調理の場合で味を確認してっていうのを繰り返して作り上げてます。ダメ出しが的確なんですよ(笑)。だから反発することはほとんどないですね。ずーっとこのスタイルです。
朝の積み込みを分担しているんですが、現場に行ったら積み忘れがあったとか、釣り銭を渡し忘れた、とか些細なことでケンカになったりももちろんしますよ。売れなかったときのグチがエキサイトしたりとか。でも協力しあってここまでやってきましたね」
ご夫婦で選んだいまの道
事業を拡大したいという想いから、最大7台までキッチンカーを稼働させたこともあったという『gotoQ』さん。今はご夫婦で1台ずつ、計2台のキッチンカーを切り盛りしています。
真男さん「あるとき、家庭をとるか、仕事をとるか、という決断に迫られたタイミングがあったんだよね。それまでは休みもなく仕事して、人も雇って大変で。
嫁さんが『こじんまりとふたりでやる?ふたりでやろうよ』と言ってくれたんです。『事業大きくできないけど、そんなんでもいいの?』と聞いたら、『いいよ』と。
そこから嫁さんも本格的にキッチンカーを動かしてもらうようになって、7年くらいかな。今に至ります。その時は事業を小さくしてしまっていいのかなって半信半疑だったけど、いまはこの道を選んですごく良かったと思っています」
キッチンカーでは銀座、赤坂、芝公園、竹芝、永田町等に2台のキッチンカーで出店中(2023年1月現在)。
【case3】若くしてキッチンカーをはじめ早11年、鉄板鶏飯『Little Kitchen Soleil』、北河さんご夫妻の場合
20代でキッチンカーを開業し、キャリア11年
『Little Kitchen Soleil』の鉄板鶏飯は、注文が入ってから熱々の鉄板の上で焼き上げてくれる柔らかい鶏肉を、オリジナルダレを絡めていただくやみつきごはん。野菜もたっぷりでごはん大盛り無料という気前の良さも含めてコスパ最高です。陽路さん24歳、智美さん22歳のときにキッチンカービジネスを開業。現在は月間3トン〜4トンの鶏肉を扱う大人気店です。元々料理人で割烹料理屋に勤めていた陽路さんが、10年ほど前にケバブのキッチンカーを発見し、「やってみたい!」と思ったのがキッチンカーを開業したきっかけ。現在は9歳と6歳の双子を子育てしながらキッチンカーと固定店舗を経営しています。
ご夫婦でキッチンカーをやっていてよかったこと
陽路さん「キッチンカー開業とほぼ同時に結婚したんですが、当時妻は昼にキッチンカー、夜は飲食のバイトをしてくれていました。そこから徐々にスタッフ、車を増やし、キッチンカー事業はいま夫婦2人とスタッフ2名の4名で4台を稼働しています。スタッフも含めて責任を持ってやってもらっていますね。
夫婦でやっててよかったなというのは、仕事のことをあれこれ考えていて夜10時に相談したいことができたという時、スタッフにはなかなか連絡しにくいですが、いつもすぐ近くに相談できる相手がいるというのは大きいです。『週4日通ってくれるお客さんがいるんだよね』とか、仕事の話も共有できることもいいなと思っています。
また、若いうちにノリではじめて気づいたらキッチンカーのキャリアも11年になっていました。キッチンカー業界もまだまだこれからなので、夫婦ともにまだまだ体力のあるうちにこのキャリアを積めたことはとても大きいと思っています。スタッフも含めてこれからもしっかりやっていきたいですね」
キッチンカーでは赤坂、青山、日本橋、芝浦、広尾等、4台のキッチンカーが街中に出店中(2023年1月現在)。